会長挨拶
社団法人 日本脳神経外科学会 第69回学術総会開催にあたって
夢の実現に向かって自己の主張を!
平成22年(2010年)10月27日~29日の3日間、福岡市の福岡国際会議場、マリンメッセ福岡、福岡サンパレスを会場と致しまして、社団法人日本脳神経外科学会第69回学術総会を開催させていただきます。
厳しい環境の中で会員諸氏が日々頑張っている事、日本脳神経外科学会が果たしてきた功績などを社会に向かって、また世界に向かって主張し、若者達に夢と希望を持ってもらうという趣旨で今回の主題を「夢の実現に向かって自己の主張を!」とさせていただきました。
本年は、一般演題に1,931題の応募を頂き1,912題を採択させて頂きました。これらに指定演題を含めて審査・分類した結果、シンポジウム198題、一般口演769題、デジタルポスター959題の構成になりました。その他、若手ビデオセッションや各種の特別企画での発表を含めると2,028題の発表をしていただくことになります。
日本脳神経外科学会の会員諸氏が果たしてきた功績を主張するための客観的データを集積する事を目的として、基礎系および臨床系のトップジャーナル26誌における掲載論文数の主要各国別推移、脳神経外科の各領域別分布と推移、卒業後経験年数ごとの学会員の上記各雑誌への投稿数などを調査しましたので、会長講演として発表させていただきます。招待演者のJohn A. Jane教授(Journal of NeurosurgeryのChief Editor)には、highly cited articlesの解析結果や米国のレジデントの労働時間制限が臨床と研究面にどのような影響を及ぼしているか、問題解決のための将来構想、などについて講演いただき、WFNS会長のHee-Won Jung教授には、韓国脳神経外科の現状と将来展望について講演いただきます。こうした講演から、世界における日本の現状と問題点が理解される事を期待しております。
その他、Ossama Al-Mefty教授、Volker Seifert教授、Jizong Zhao教授などの著名な先生方23名を世界11カ国から招聘し、特別講演(口演およびビデオ)、シンポジウムで発表していただきます。福岡はアジアに最も近い都市ですので、日本とアジア諸国の脳神経外科医が学術的な意見交換ならびに交流を図る事が重要であります。そうした趣旨で学術総会の前々日(10月25日)にJapan-Asia Friendship Conferenceをヒルトン福岡シーホークで開催させていただきます。多数の先生方の参加をお待ちしております。Japan-Asia Friendship Conferenceに参加いただく24名のアジア諸国の先生方には、引き続き学術総会に参加いただき学術総会を盛り上げていただきたいと思っております。
今回の新たな企画として、若い先生方に夢の実現に向かって自己の主張をしていただくために、66名の30代の先生方にビデオ発表をしていただく特別企画(若手ビデオセッション)を設けました。同世代の先生方がどのような手術をしているのかを観て今後のモチベーションの向上に役立てていただければ幸いです。また、中堅・若手の先生方の手術手技の向上を目的として、3日間終日のハンズオンコースを10コース16項目(血管吻合、神経内視鏡、頭蓋底ドリリング、血管内外科、脊椎外科、他)企画させていただきました。モーニングセミナーでは、「専門医に必要な基礎知識とその臨床への応用」シリーズを企画し、各領域の著名な先生方に教育講演をお願いしております。学術講演は、若手・中堅の先生方に夢と高いモチベーションを持っていただけるような企画を心がけましたが、その一方で、63-65歳で退職した先輩諸氏にも精神的・肉体的に老けることなくご活躍いただけるようにとの思いから、文化講演では、御年104歳で世界最長寿の現役教育学者であり、しいのみ学園創始者である曻地三郎博士に100歳を超えても呆ける事無く健康に生きる方法についてお話いただきます。先生のお話をうかがっておりますと、その抜群の記憶力と精神的・肉体的若さに驚嘆せざるを得ません。今までの常識が変わる事、間違いなしです。また、ここ数年、別会場で実施されております「脳神経外科塾」は、今回は総会の特別企画として2日目の午後にD会場で2時間行っていただくようにいたしました。「東アジアにおける日本―良医とは?」というテーマで、韓国脳神経外科学会名誉会長のKil Soo Choi先生、元台湾神経外科学会理事長の施純仁先生、前国際日本文化研究センター所長で日本を代表する宗教学者でいらっしゃる山折哲雄先生に講演していただきます。
改正臓器移植法が本年7月17日に施行されましたが、脳死判定・臓器移植の実施に際して医療現場での混乱も予想されます。そこで、現状での問題点、新たな制度の周知・啓発の方法、医療現場における体制整備、などについて議論いただくために「改正臓器移植法への対応と問題点」という特別企画を設けさせていただきました。 学術委員会からは、「脳神経外科のキャリアパス」という特別企画を提案いただきました。最近は脳神経外科医の厳しい労働環境から脳神経外科医を目指す研修医が減少しておりますので、問題点の認識・職場環境整備について議論いただくために「医師不足対策と勤務医の職場環境整備」という特別企画も計画させていただきました。「卒前教育セミナー」も企画しておりますが、学会2日目には、新たな試みとして「高校生のための脳神経外科入門2010」を開催します。高校生の方に、学会に出席し、脳神経外科最先端の活動を体験研修してもらうことで、脳神経外科また広くは医学、脳科学に興味をもっていただくきっかけになればと考えております。
ニューロナースとのジョイントセッションも昨年に引き続き企画しております。
なお、学会の翌日(10月30日)には、アクロス福岡4F国際会議場で市民公開講座「皆でまもろう脳の健康」を開催いたします。
以上、先生方が更なる夢の実現に向かって一歩前進できるような学会にしたいと思っております。皆さまの積極的な参加を教室員・同門会員一同お持ちしております。
社団法人日本脳神経外科学会第69回学術総会
会 長 佐々木 富男
(九州大学大学院医学研究院脳神経外科教授)